2020年1月法話 『安心(あんしん)と安心(あんじん)』

2019年12月14日

画.阿 貴志子

安心(あんしん)と安心(あんじん)

 

安心の安は、家の中に女がいるから安らぐという意味になるのだという説を聞いたことがある。(なるほど漢字は意味が深い)と思っていたが、最近の女性は男と同じく、あるいは、それ以上に外で働き活動しているのだから家を表す宀(うかんむり)の中にどんな字を当てたらよいのだろうか。

 安心を一般的な読み方として(あんしん)と読めば、心配がなくなって、気持ちが落ち着く様子(新明解国語辞典)という意味である。

 例えば、息子が出張した先で大地震があったというニュースをテレビで見て、心配していたら、無事だと分かって安心した。そんな時の心の安らぎ。心配事がなくなって、ホッとしたのだから、心は落ち着きを取り戻し安心(あんしん)する。

 ところで、この安心(あんしん)を(あんじん)と読んだら、どのような意味になるのだろうか。

 (あんじん)と読んだならば、どうしても仏様にお出ましいただかねばならない。

 阿弥陀様は一切衆生をお救いくださる仏様だ。そのお心を信じきり、心身を阿弥陀様にゆだねた時に得られる絶対的なやすらぎが安心(あんじん)なのだ。

 そのような安心を得た人を妙好人といっているが、こんな話がある。

 山口県におかるという女性がいた。彼女は信心深く常に念仏を唱えていた。そして、こんなことも言っていた。

 「阿弥陀如来を殿御にもてば、娑婆の貧乏は苦にならぬ」と。殿御とは“夫”のことだから、「阿弥陀様を夫にもてば」というのだ。つまり、阿弥陀如来を信じきり一体となることを意味している。そうなれば、阿弥。陀如来は来世にすばらしい浄土に導いてくださるのだから、この世の苦しみなど気にしないと言うのである。

まさに安心立命(あんじんりゅうみょう)ではないだろうか。(阿 純孝)



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