2019年12月法話 『「出世」をどう読むか』

2019年11月25日

画.阿 貴志子

「出世」をどう読むか

 日本語はむずかしい。同じ漢字でも読み方によって意味がちがってしまうことがある。「出世」がその例だ。

「出世」を(しゅっせ)と読めば、赤ん坊が生まれることだが、子が産まれたら、役所に届け出る義務がある。それを「出世届」(しゅっせいとどけ)という。また、生まれた故郷は出生地(しゅっせいち)だ。

 ところが、「出世」を(しゅっせ)と読んだらどうなるか。

「君も出世(しゅっせ)したなあ」といえば褒めことばになるが、「君も出世(しゅっせい)したなあ」といったら、おかしなことになる。

「出世」を(しゅっせ)と読めば、社会に認められて、評価が高くなることだ。

「出世作」(しゅっせさく)といえば、小説などの作品が世に認められることで、作家としては名誉なことだ。また、出世力士(しゅっせりきし)とは、番付表に自分の四股名(しこな)が載ることだから、力士として認められたことになる。その最たるものは一番出世だ。出世頭(しゅっせがしら)ともいって、将来が期待される存在なのだ。

 話は変わるが、魚にも出世魚(しゅっせうお)という魚がいる。その魚は成長するごとに名前が変わる。

 セイゴ→フツコ→スズキ。

 ツバス→ハマチ→ワラサ→ブリ(一例)

 という具合だ。

 なぜ成長するごとに呼び名が変わるのかといえば、一説にこう理由づけをしている。

 江戸時代に武士や学者の家柄の者は、元服を迎えたら幼名から成人名に変え、服装も替えたので、それに因んだのであろうという説である。

 さてそこで、「出世」の語源を尋ねていくと、仏教にたどり着く。

「出世」(しゅっせ)とは、本来、お釈迦さまがこの世に出現されたことを意味することばなのだ。だから、(しゅっせい)の意味にとっても、あながちまちがってはいない。が、質がちがう。ということは、お釈迦さまがこの世に出現されたのには、大きな理由(わけ)があるのだ。

 この世の衆生を済度(救済)するためなのだ。それは終わりなく続く。お釈迦さまは八十歳で涅槃に入られるが、この世で法を説かれたお釈迦さまは応身仏なのだ。

この精神は、四月八日の「花まつり」の誕生仏のお姿にも表れている。天上天下を指差すお釈迦さまのお誕生のお姿の中に仏のしるしである三十二相を備えていらっしゃるから、仏さまの誕生なのだ。

 四月八日は、仏さまが衆生済度のためにお釈迦さまのお姿になってこの世に出現された日なのである。これこそが本来の「出世」の意味である。

                                 阿 純孝



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