2017年10月法話 『すべってころんで山はひっそり』

2017年09月17日

「すべってころんで 山はひっそり」

 ご承知の通り種田山頭火の句です。

 山頭火は、生活の面では放埒で安定していたとは決していえません。失敗をくり返した挙句、四十二歳で出家し、雲水姿で放浪の旅に出て、その間、俳句を作り続けた放浪の俳人でした。ですから、この句で〝すべったり、ころんだり〟しているのは、山頭火自身だと思います。自分の心情を詠んでいるのでしょう。そして、この句に魅せられるのは、私自身にも思い当ることだからです。なぜか〝なるほどなあ〟と頷いてしまいます。

 山頭火が出家したことにもよるのでしょうが、この句の背景には仏教的なにおいを感じます。

 すべってころんだりしている姿は、四苦八苦の娑婆世界の住人である私たちです。勝手にジタバタしているのです。気がつけば、まわりの山は静かに支えてくれているのにです。

 仏さまが私たちを静かに支えていて下さるのに、なぜかジタバタするのです。



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