2017年2月法話『ひとりごと』

2017年01月21日
画.阿 貴志子

画.阿 貴志子

ひとりごと

 昨年の暮れのことです。机の引き出しを整理していましたら、紙切れが出て来ました。平成五年五月と日付が書いてありました。

 今から二十三年も前のことになります。私がしまったのに違いないのですから、少しぐらいは憶えていそうなものなのに、それが全く記憶にありません。自分で書き日付まで入れているということは、座右の銘ほどに大切な憶え書きだったからでしょう。

 時が経つと忘れるのか、歳のせいにしたくはないが情けないと思いながら紙切れを読んでみましたら、おさはるみの『ひとりごと』という詩です。その詩すら思い出せませんでしたが、かえって新鮮な気持ちで読むことができました。

 

 ひとりごと

 わたしが わたしになるために

 人生の失敗も必要でした 

 むだな苦心も骨折りも悲しみも

 すべて必要でした

 わたしが わたしになれた今

 みんな あなたのおかげです

 恩人たちに手をあわせ 

 ありがとうと

 ひとりごと

 

 私は今、どのような生き方をするにしても、人生に無駄はないと思うことにしていますが、ひょっとしたら、二十三年前、この詩に出会ったおかげなのかも知れません。だから、メモ書きしたのでしょう。なのに忘れてしまったのです。ところが、引き出しを整理している時、偶然にもメモ書きのこの詩に出会うことができました。これこそまさしく仏さまのお導きなのだと思います。

 ありがたいことです。お正月にふたたびこの詩を味わうことができたのですから



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